空き家はなぜ増え続けるのか?

空き家が増える最大の理由は、「使わない家を手放せない仕組み」にある。

総務省の住宅・土地統計調査によれば、日本の空き家はすでに900万戸規模に達している。
割合で見れば、住宅全体の約7戸に1戸が空き家という計算だ。

しかし、数字だけでは本質は見えてこない。
問題は「なぜ減らないのか」である。

現場でよく聞くのは、相続後に誰も住まなくなった実家を「とりあえずそのまま」にしているケースだ。
売るにも解体費が高い。貸すにも修繕費がかかる。

結果として、「放置」が最も合理的な選択になってしまう。
これが構造的な問題である。

所有者不明土地はなぜ拡大しているのか?

所有者不明土地は、相続の連鎖と登記未更新が積み重なった結果である。

不動産の登記は、これまで義務ではなかった。
そのため、親から子へ、さらに孫へと相続が進んでも、名義変更が行われないケースが多発した。

相続人が10人、20人に広がり、連絡先すら分からない。
こうなると売却も再開発も不可能になる。

国土交通省の推計では、所有者不明土地は九州の面積を超える規模に及ぶともいわれている。
これは単なる「空き地」ではなく、社会インフラの停滞要因だ。

災害復旧や公共事業が進まない理由の一つがここにある。

空き家問題は本当に地方だけの話なのか?

空き家問題は地方特有の問題ではなく、都市部にも静かに広がっている。

「空き家=過疎地」というイメージは強い。
確かに人口減少が著しい地域では深刻だ。

だが、都市近郊にも老朽化した戸建てが点在している。
相続人が遠方に住み、管理できないケースも多い。

特に高度経済成長期に造成された住宅地では、
住民の高齢化が一斉に進んでいる。

一世代後、その多くが空き家になる可能性がある。
これは「未来の都市問題」でもある。

なぜ解体が進まないのか?

解体が進まない最大の理由は、コストと税制の歪みにある。

古い木造住宅を解体するには100万〜300万円程度かかる。
地方では土地価格より解体費が高いことも珍しくない。

さらに、建物を取り壊すと固定資産税が上がる。
住宅用地特例が外れるためだ。

つまり、「壊すと損をする」構造になっている。
これでは放置が合理的になるのも無理はない。

制度は改善されつつあるが、現場感覚ではまだ十分とは言えない。

所有者不明土地はどんな社会リスクを生むのか?

所有者不明土地は、防災・治安・経済のすべてに影響を与える。

まず、防災リスク。
倒壊の危険がある空き家は、地震や台風時に二次被害を拡大させる。

次に治安。
管理されない建物は不法侵入や放火の温床になりやすい。

そして経済。
再開発ができず、土地が活用されないことは地域経済の停滞につながる。

所有者が分からない土地は、社会の「空白地帯」になる。
これは静かなインフラ崩壊とも言える。

法改正で解決できるのか?

法改正は前進だが、それだけでは不十分である。

2024年から相続登記が義務化された。
これは大きな一歩だ。

しかし、すでに発生している未登記土地は膨大である。
過去分をどう整理するかが課題だ。

また、所有者が分かっても、活用する意思がなければ問題は残る。
法律は入口であり、出口ではない。

本質は「使われない不動産をどう流通させるか」にある。

空き家は資産か、それとも負債か?

人口減少社会では、不動産は必ずしも資産ではない。

多くの日本人は「家は資産」という前提で育ってきた。
しかし、人口が減る社会では前提が逆転する。

買い手がいなければ価格はつかない。
固定資産税や管理費だけが残る。

特に地方では「売れない家」が増えている。
これは家計の問題でもある。

不動産神話の見直しなしに、空き家問題は語れない。

行政代執行は現実的な解決策なのか?

行政代執行は最終手段であり、広範な解決策にはなりにくい。

危険空き家については、自治体が解体する仕組みがある。
だが、費用回収は容易ではない。

自治体の財政負担も大きい。
すべてを公費で処理することは現実的ではない。

結果として、対応は限定的になる。
制度があっても、実行力が伴わなければ意味は薄い。

空き家問題は解決できるのか?

完全解決は難しいが、縮小させることは可能である。

鍵は三つある。

第一に、早期の相続整理。
放置期間が長いほど複雑化する。

第二に、流通の促進。
リノベーションや賃貸活用の支援が必要だ。

第三に、税制の見直し。
解体や売却が合理的な選択になる制度設計が重要である。

空き家は「個人の問題」に見える。
だが、実際は社会全体の課題だ。

人口減少が進む以上、住宅は余る。
それを前提にした政策転換が求められる。

所有者不明土地の未来はどうなるのか?

放置すれば拡大するが、制度と意識改革で抑制は可能である。

日本は今、「所有」を前提とした社会から、「管理」を重視する社会へ移行しつつある。
重要なのは、持ち続けることではなく、責任を果たすことである。

不動産は静かに社会を映す鏡だ。
そこに映るのは、人口構造、家族形態、経済力の変化である。

空き家問題は単なる住宅問題ではない。
それは、日本社会の縮図である。