──ベネズエラ事例が映す台湾有事の不都合な現実

中国のデュアルユース輸出禁止は「強さの表明」なのか

結論から言えば、今回の中国による「軍民両用(デュアルユース)品の対日輸出禁止」は、強さの表明ではない
むしろそれは、軍事的に主導権を握れていない側が、平時に切ってしまった高コストなカードだ。

国家が経済カードを使うとき、そこには必ず「時間」の問題が横たわる。
余裕がある側は時間を味方につける。
余裕がない側ほど、先に音を立てる。

今回、中国が選んだのは明らかに後者だった。

なぜデュアルユース規制は「最後に取っておく手段」なのか

デュアルユース規制は、通常の関税や通関調整とは次元が異なる。
軍事転用の可能性を理由にすれば、WTOルール上も一定の正当性は主張できるが、その代償は大きい。

第一に、自国企業へのダメージが避けられない。
第二に、相手国に「有事を想定した準備時間」を与えてしまう。
第三に、同盟国を結束させる効果が極めて高い。

軍事的に本当に自信がある国は、このカードを平時には切らない。
なぜなら、奇襲性と不確実性こそが軍事優位の源泉だからだ。

それにもかかわらず、中国はこのカードを今、切った。

ベネズエラで何が起きたのか──見落とされがちな核心

ここで重要になるのが、**ベネズエラ**で起きた事象だ。

この国は長年、中国製の防空レーダー、指揮統制システム、電力制御インフラを導入してきた。
南米随一とも評された防空網は、中国製システムを中核として構築されていた。

ところが、米軍は大規模な地上侵攻も空中戦も伴わず、
電子戦・サイバー・精密攻撃を組み合わせることで、短時間のうちに国家機能を事実上停止させた。

重要なのは、「撃墜された」「迎撃できなかった」という話ではない。

戦う前に、戦えない状態にされた

この一点に尽きる。

さらに注目すべきは、中国の特使がマドゥロ大統領と会談した数時間後に起きたというタイミングだ。
外交的存在感を誇示する余地すら与えられなかった。

この事例が中国に突きつけた現実とは何か

ベネズエラは中国本土ではない。
だが、中国が海外に輸出してきた「中国式統合軍事・インフラモデル」が、
米軍主導の現代戦にどこまで耐えられるのかを、世界に示してしまった。

  • 電力網が止まる
  • 通信が乱れる
  • 指揮系統が機能しない

この状態では、兵器の性能や数は意味を持たない。

中国が最も恐れたのは、
この構図が台湾有事にそのまま連想されることだ。

台湾有事とベネズエラは本当に結びつくのか

もちろん、**台湾**は条件がまったく異なる。
地理、同盟関係、準備度、投入リソース、そのすべてが違う。

しかし、戦争の初動で最初に狙われるものは共通している。

それは領土ではない。
兵器でもない。

通信・電力・指揮・情報だ。

ベネズエラで露呈したのは、
中国製システムが「統合無力化」という戦い方に対し、想定以上に脆弱である可能性だった。

なぜ中国は経済戦を「前倒し」したのか

ここで再び、デュアルユース輸出禁止に戻る。

この措置は、日本の軍事力を即座に弱体化させるほどの効果はない。
日本側はすでに想定しており、代替調達も可能だ。

それでも切られた理由は明確だ。

軍事で決め切れないという不安が、経済カードを前に押し出した

これは日本向けというより、
中国国内と軍内部に向けた「強硬姿勢の演出」と見る方が合理的だ。

日本はどう受け止めるべきか

日本にとって重要なのは、感情的反応ではない。

**自衛隊**は、
**アメリカ軍**との統合運用を前提に、
電子戦・サイバー・宇宙領域を含めた現代戦への備えを進めている。

今回の中国の動きは、
不安を与えるものというより、不安を抱えている側の動きとして理解すべきだ。

結論:音を立てたのは、余裕のある側ではない

軍民両用輸出禁止、ベネズエラでの無力化、台湾有事への視線。
これらを一本でつなぐと、浮かび上がるのは単純な構図だ。

準備が整っている側は、静かに動く。
準備が整っていない側ほど、先に音を立てる。

中国が今、音を立てている理由は何か。
その問いこそが、今回の一連の動きを理解する鍵である。