なぜ「コンビニ減少時代」がやってくるのか?
日本全国に5万店以上あるとされるコンビニは、長らく「社会インフラ」として機能してきました。しかし、近年は人手不足や人口減少、物流コストの高騰などが重なり、業界の成長モデルが大きく揺らいでいます。特に地方では、店舗の閉店が目立ち始め、「コンビニが減る未来」が現実味を帯びてきました。
筆者が地方都市の駅前で聞いた話では、以前は徒歩5分圏内に2店舗あったコンビニが、いまでは1店舗のみ。高齢者にとっては「夜中でも明かりが灯る安心拠点」だっただけに、閉店は生活に直結する問題です。
ではなぜ、かつて「成長産業の象徴」だったコンビニが縮小の方向へ進んでいるのでしょうか。
24時間営業は本当に必要なのか?
コンビニの特徴として長らく語られてきたのが「24時間営業」。しかし、AIによる購買データ解析からも明らかなように、深夜帯の利用者数は全体の数%にすぎません。
とくに地方のコンビニでは深夜の来客数は一晩で数人ということも珍しくなく、アルバイトを雇って照明や冷暖房を稼働させるコストに見合わなくなっています。
AIが集計したPOSデータによれば、売上のピークは朝7〜9時と夕方17〜20時に集中しており、深夜帯は赤字時間帯といえます。業界は長らく「利便性」という旗を掲げ続けてきましたが、データに基づけば「24時間営業は不要」という結論が浮かび上がります。
実際、セブン-イレブンをはじめとする大手チェーンも一部地域で時短営業を導入し始めています。
地方では「人口減少」と「後継者不在」が深刻
都市部では依然としてコンビニの需要は高いものの、地方の状況はまったく異なります。
国勢調査データとAI予測モデルを組み合わせると、今後20年間で地方の人口は最大で30%減少すると見込まれており、それは即ち「消費者の消失」を意味します。
また、オーナーの高齢化も進んでいます。フランチャイズ形式を取るコンビニは、個人や家族が店舗を経営していますが、後継者がいないケースが増え、閉店を余儀なくされる例が相次いでいます。
ある県では、ここ5年でコンビニ店舗数が約8%減少しており、その多くが「オーナーの引退」を理由としていました。
コンビニは「生活インフラ」から「選別された拠点」へ?
では、コンビニが消えていく未来は避けられないのでしょうか。
AIによるシミュレーションでは、「すべての地域から一斉にコンビニがなくなる」のではなく、「需要のある場所にだけ残る」という選別が進むと予測されています。
都市部や観光地では高い売上が期待できるため存続が見込まれる一方、地方の過疎地では行政や物流企業と連携しなければ維持できないとされます。
実際、ローソンは自治体と協定を結び、店舗を「防災拠点」として機能させる試みを進めています。店舗が単なる小売業から「地域サービス拠点」へと変貌する可能性は高いでしょう。
「無人店舗化」は救世主になるのか?
人手不足を補う手段として注目されているのが「無人店舗」や「AIレジ」です。
大手各社はすでに深夜帯における無人営業を試験導入しており、AIカメラやセルフレジによる省人化が進んでいます。
ただし、導入コストは数百万円単位にのぼるため、売上の少ない地方店舗にとっては現実的ではありません。むしろ都市部の高収益店で導入が先行し、地方は取り残されるリスクがあります。
この意味でも、「コンビニの減少」は単なる流通業の変化ではなく、地域格差を広げる要因となりかねません。
コンビニが消えた地域はどうなるのか?
コンビニがなくなった地域でまず困るのは、高齢者や車を持たない住民です。日用品や食品の購入機会が減少し、「買い物弱者」が増える可能性が高まります。
すでに一部の自治体では、移動販売車や宅配サービスで補完する取り組みが始まっています。
しかし、コンビニが果たしてきた「防犯灯」「避難場所」「公共料金の支払い窓口」といった多面的な機能を完全に代替するのは難しいのが現実です。
コンビニ減少は日本社会の「縮図」か?
こうした動きを俯瞰すると、コンビニ減少は「人口減少」「人手不足」「インフラ維持困難」という日本社会の課題を象徴しているといえます。
つまり、コンビニは単なるビジネスモデルではなく、社会の構造変化を映す鏡なのです。
都市部に住む人は「24時間営業なんて不要」と言えるかもしれませんが、地方の人にとっては「最後の拠点」が失われることを意味します。
今後は、行政・企業・地域住民が協力し、「必要な場所に必要な形で残す」コンビニの新しいあり方を模索することが不可欠です。
コンビニの未来は「選別」と「再定義」にかかっている
コンビニは減少の一途をたどるでしょう。しかし、それは単なる衰退ではなく、社会の変化に応じた再定義の過程とも言えます。
24時間営業という神話が終焉を迎えた後に残るのは、「必要な場所にだけ生き残る、地域密着型のコンビニ」かもしれません。
未来のコンビニは、ただの「便利な店」ではなく、「地域社会を支える拠点」として存続できるのか。その答えが、日本の地方の未来そのものを映し出すでしょう。