教育格差は「学力」ではなく「進路の選択肢」で固定化されている
教育格差というと、学力や偏差値の差が語られがちだ。しかし本質はそこではない。都市と地方の教育格差は、学力以前に「進路の見え方」と「選択肢の数」によって再生産されている。この構造を理解しない限り、どれほど制度を整えても格差は解消されない。
教育格差はどこから生まれているのか
日本では義務教育のカリキュラム自体は全国共通であり、教科書もほぼ同一だ。それにもかかわらず、進学実績や進路の多様性には大きな差が生じている。
原因は、学外環境の違いにある。具体的には以下の三点だ。
- 情報へのアクセス量
- 周囲の大人が持つ進路モデル
- 教育投資にかけられる時間と資金
これらは家庭環境だけでなく、地域そのものが持つ教育エコシステムに依存している。
都市部の子どもは何が「当たり前」なのか
都市部では、学習塾、予備校、進路相談、模試、オープンキャンパス、キャリア教育イベントが日常的に存在する。
重要なのは、それらが「特別なもの」ではなく、空気のように存在している点だ。
・この学校に行けば次はこの大学
・この大学ならこの業界
・この職業ならこの生き方
こうした暗黙の進路マップが、家庭や学校、地域を通じて自然に共有される。子どもは「選択しているつもり」で、実は選択肢を最初から与えられている。
地方の子どもはなぜ不利になるのか
一方、地方ではどうか。
選択肢が少ないというより、選択肢が可視化されていないことが最大の問題だ。
・ロールモデルが身近にいない
・進学後の生活像が想像できない
・都市部への移動コストが高い
結果として、「地元に残る」「県内で進学する」「安定した職に就く」という進路が、合理的選択として固定化されやすい。これは能力の問題ではなく、情報と想像力の格差である。
一次分析:進路決定に影響する要因を整理する
独自に整理すると、進路決定に影響する要因は以下の五層に分かれる。
- 学力・成績
- 家庭の経済力
- 地域の教育資源
- 情報へのアクセス
- 将来像を描けるかどうか
政策議論では①②ばかりが注目されるが、④⑤が最も地域差を生みやすい。特に⑤は数値化しにくいため、見落とされがちだ。
ICT教育やオンライン学習で格差は埋まるのか
オンライン授業や教育DXは、格差解消の切り札のように語られてきた。しかし現実は限定的だ。
理由は単純で、使いこなせるかどうかも環境依存だからである。
・自宅に学習専用の空間があるか
・質問できる大人がいるか
・将来にどう結びつくか理解できているか
オンライン教材は「きっかけ」にはなっても、進路を決定づける力は弱い。
教育格差は努力の問題なのか
しばしば「努力すれば道は開ける」と語られる。しかし努力が成果に結びつくかどうかは、努力の方向性が正しいかに左右される。
都市部では、努力の方向性そのものが周囲から自然に修正される。一方、地方では、努力しても「その先」が見えにくい。
これは本人の怠慢ではなく、構造的なナビゲーション不足である。
地方から成功する人はなぜ「例外」になるのか
地方出身で成功した人物が紹介されることがある。しかし多くの場合、それは「例外」として消費される。
重要なのは、彼らが特別だったからではない。偶然、情報と機会に接続できたからだ。
例外を称賛するだけでは、構造は変わらない。
教育格差を解消する鍵は「進路情報の再設計」にある
教育格差を是正するために必要なのは、テストの点数を揃えることではない。
都市部に存在する進路情報と意思決定のプロセスを、地方でも再現することである。
・職業と学びを結びつけて語る
・進学後の生活像を具体的に示す
・地域外の世界を「現実的な選択肢」として見せる
これがなければ、どれほど教育予算を増やしても格差は残り続ける。
教育格差は解消できるのか
可能性はある。ただしそれは、制度改革ではなく、進路の可視化と想像力の民主化が実現したときだ。
教育とは知識の分配ではない。未来を描く力を、どこに生まれても持てるかどうかの問題なのである。
