少子高齢化の“最前線”で家計は何が起きているのか
なぜ健康保険料は毎年のように上がるのか
結論から言えば、支払う人が減り、使う人が増え続けているからである。
日本の健康保険制度は「現役世代が高齢者医療を支える」構造を前提としており、人口構成の変化がそのまま保険料に反映される。
少子高齢化が進む中、医療を多く利用する高齢者は増え続けている。一方で、保険料を支払う現役世代は減少している。このアンバランスが、制度の根幹を揺さぶっている。
現役世代の負担はどれほど増えているのか
会社員が負担する健康保険料は、給与から天引きされるため実感しにくい。しかし実際には、過去20年で保険料率は一貫して上昇してきた。
仮に年収500万円の会社員の場合、健康保険・介護保険を合わせた自己負担額は年間40万円前後に達する。これは家賃1か月分、あるいは子どもの教育費に匹敵する水準である。
重要なのは、これが「将来の自分の医療費」ではなく、現在の高齢者医療の補填に使われている割合が非常に高いという点である。
高齢者医療費はなぜ膨らみ続けるのか
医療費増大の主因は、単なる高齢者人口の増加だけではない。
- 慢性疾患の長期治療
- 高度医療機器・新薬の普及
- 「念のため受診」がしやすい制度設計
これらが重なり、一人当たり医療費が年々上昇している。75歳以上では、現役世代の約4倍の医療費がかかるというデータもある。
さらに、高齢者の自己負担割合は原則1〜2割に抑えられており、残りは保険財政から支出される。この差額を埋めているのが、現役世代の保険料である。
「現役世代が損をする制度」になっていないか
制度設計上、現役世代は「支払う側」、高齢者は「受け取る側」になりやすい。
問題は、その構造が人口動態の変化を前提に更新されていない点にある。
かつては「自分も将来は支えてもらえる」という暗黙の合意が成立していた。しかし現在の若年層は、将来同水準の給付を受けられる保証がないと感じている。
その結果、
- 保険料は上がる
- 可処分所得は減る
- 結婚・出産・消費を控える
という負の循環が生じている。
企業と個人、どちらがより苦しくなっているのか
健康保険料は労使折半で支払われるため、企業側の負担も無視できない。
特に中小企業では、社会保険料の上昇が賃上げ余力を直接圧迫している。
結果として、
- 賃金が上がらない
- 手取りが増えない
- 物価上昇だけが進む
という構図が固定化される。これは個人の問題であると同時に、日本経済全体の成長力を削ぐ要因でもある。
制度はこのまま維持できるのか
現行制度を維持するには、次のいずれかが必要になる。
- 現役世代の保険料をさらに引き上げる
- 高齢者の自己負担割合を上げる
- 医療サービスの範囲を絞る
- 税財源を大幅に投入する
しかし、いずれも政治的なハードルが高い。特に高齢者負担の引き上げは選挙への影響が大きく、先送りされがちである。
私たちの家計はどう備えるべきか
短期的に保険料上昇が止まる可能性は低い。現役世代としては、
- 固定費として社会保険料を前提に家計設計する
- 医療費控除や保険制度を正確に理解する
- 「手取りが増えない理由」を構造的に把握する
ことが重要になる。
これは個人の努力だけで解決できる問題ではないが、現実を直視しない限り、負担は静かに増え続ける。
健康保険制度の行方はどこへ向かうのか
健康保険制度は「誰もが安心して医療を受けられる」日本社会の基盤である。一方で、その維持コストは確実に現役世代へ集中している。
今後問われるのは、「支える人数が減る社会で、どこまで同じ制度を続けるのか」という選択である。
これは医療の問題であると同時に、世代間の公平性をどう考えるかという社会的問いでもある。
