在日外国人が初めて400万人を超え、外国人による窃盗や組織犯罪の報道も目立つようになった。日本の治安は今後、さらに悪化するのだろうか。結論からいえば、外国人の増加だけで治安悪化は決まらないが、受入れ拡大に管理・支援・捜査体制が追いつかなければ、地域の安全が搦なわれる現実的な危険はある。本稿では、育成就労制度と最新の犯罪統計から論点を整理する。
在日外国人400万人超は何を意味するのか?
在日外国人が400万人を超えたことは、日本がすでに外国人労働者の一時的な受入れ国ではなく、多数の外国人が生活する定住型社会へ移行しつつあることを示している。
出入国在留管理庁の「令和7年末現在における在留外国人数について」によると、2025年末の在留外国人数は412万5,395人だった。前年末から35万6,418人、率にして9.5%増加し、統計上初めて400万人を超えた。
この数字には、就労目的の外国人だけでなく、留学生、家族滞在者、永住者、特別永住者なども含まれる。したがって、400万人全員を「新たに入国した労働者」や「移民」とみなすのは正確ではない。
それでも、日本社会における外国人の存在が急速に大きくなっている事実は変わらない。人口減少が進む日本では、外国人労働者の受入れが今後も続けば、外国人が地域社会の構成員として生活する場面はさらに増える。
外国人の増加によって影響を受けるのは、労働市場だけではない。行政や地域社会には、次のような対応が必要になる。
- 日本語教育と生活ルールの周知
- 医療、教育、住宅、社会保険の受入れ体制
- 違法就労や悪質な仲介業者への監督
- 警察、入管、自治体間の情報共有
- 犯罪被害や地域トラブルへの相談体制
外国人の受入れ人数だけを増やし、これらの社会的基盤を後回しにすれば、制度と現場の間にひずみが生じる。問題の本質は400万人という数字そのものより、増加の速度に社会の管理能力が追いついているかどうかである。
育成就労制度は実質的な移民政策なのか?
育成就労制度は法律上「移民制度」と位置付けられていないが、外国人が日本で働きながら技能を身に付け、特定技能へ移行して長く滞在する道を広げるため、実質的には定住を促す政策としての性格を持つ。
育成就労制度は、従来の技能実習制度に代わり、2027年4月1日から始まる。技能移転による国際貢献を掲げてきた技能実習制度とは異なり、育成就労制度は日本国内の人手不足分野で働く人材を育成・確保することを正面から目的としている。
制度創設を定めた改正法が成立したのは2024年であり、高市政権が制度そのものを一から作ったわけではない。ただし、高市政権は2026年1月、育成就労制度と特定技能制度の分野別運用方針や受入れ規模を具体化しており、実際の受入れを進める政権として責任を負う。
出入国在留管理庁の「育成就労制度Q&A」によると、2028年度末までの受入れ見込数は、1号特定技能外国人が80万5,700人、育成就労外国人が42万6,200人で、合計約123万人とされている。これは二つの制度における受入れ上限であり、現在の在留外国人数にそのまま123万人が追加されるという意味ではない。
技能実習から育成就労へ何が変わるのか
育成就労制度では、原則3年間の就労を通じて、特定技能1号の水準まで人材を育成する。その後に特定技能へ移行すれば、より長期間、日本国内で働くことが可能になる。
一定の条件を満たした転籍も認められるため、旧制度より労働者の権利保護は前進する。一方で、来日前の借金、悪質な送り出し機関、違法な仲介、低賃金、孤立といった問題を解消できなければ、制度の名称を変えても同じ構造が残る。
政府が「移民政策ではない」と説明しても、育成就労から特定技能、さらに家族帯同や長期在留へ進む人が増えれば、社会に与える効果は移民政策に近づく。だからこそ、労働力の確保だけでなく、定住を前提とした制度設計が必要になる。
外国人による犯罪は実際に増えているのか?
警察庁の2025年統計では来日外国人犯罪の検挙件数・人員が3年連続で増えており、「最近、外国人犯罪が増えた」という感覚には統計上の根拠がある。
警察庁の「令和7年における組織犯罪の情勢」によると、2025年の来日外国人犯罪は、刑法犯と特別法犯を合わせた総検挙件数が2万5,480件だった。前年から3,686件、16.9%増加している。
総検挙人員は1万2,777人で、前年から607人、5.0%増加した。警察庁も、来日外国人犯罪の検挙件数と検挙人員が2023年から3年連続で増えた状況について「憂慮すべき状況」と評価している。
特に増加したのが刑法犯である。2025年の刑法犯検挙件数は1万7,614件で前年比31.4%増、検挙人員は7,333人で前年比15.2%増だった。
罪種別に見ると、刑法犯の検挙件数の69.4%を窃盗犯が占めている。来日外国人犯罪が全面的に凶悪化したというより、窃盗を中心とした財産犯罪の増加が全体を押し上げている構図である。
主な数字を整理すると、次のようになる。
- 総検挙件数は2万5,480件で、前年比16.9%増
- 総検挙人員は1万2,777人で、前年比5.0%増
- 刑法犯検挙件数は1万7,614件で、前年比31.4%増
- 刑法犯のうち窃盗犯は1万2,226件で、前年比34.3%増
- 凶悪犯の検挙件数は295件で、前年比13.5%増
一つのグループが繰り返し犯行を行えば、少数の被疑者でも検挙件数は大きくなる。検挙件数の増加と、犯罪を行った外国人の人数の増加は同じ意味ではないが、窃盗を中心に事件が増えている事実を軽視することもできない。
外国人が増えたから日本の治安が悪化したのか?
外国人犯罪の検挙増加は事実だが、それだけで日本全体の治安悪化を外国人の増加が引き起こしたと断定することはできない。
まず注意したいのが、警察統計における「来日外国人」の定義である。この区分は、永住者、永住者の配偶者等、特別永住者、在日米軍関係者などを除いており、在留外国人412万人全体とは対象が一致していない。
さらに、検挙件数は犯罪の発生件数そのものではなく、警察が被疑者を特定して検挙した事件の数である。取締りの重点、捜査体制、同一グループによる連続犯などによっても増減するため、在留外国人数で単純に割れば「外国人の犯罪率」が算出できるわけではない。
長期と直近では異なる姿が見える
長期的に見ると、2025年の来日外国人犯罪の総検挙件数2万5,480件は、2005年の4万7,865件を大きく下回る。現在が統計史上最悪の状態にあるという説明は正確ではない。
一方、直近では2022年の1万4,662件から、2023年は1万8,088件、2024年は2万1,794件、2025年は2万5,480件へと明確に増えている。「長期的にはピーク以下」と「最近は急増している」は、どちらも事実である。
日本人を含む刑法犯全体も増加している。警察庁の「令和7年の犯罪情勢」によると、2025年の刑法犯認知件数は77万4,142件で前年比4.9%増となり、2021年から4年連続で増加した。
したがって、現在の治安悪化をすべて外国人の責任とみなすことはできない。特殊詐欺、SNS型投資詐欺、闇バイト、サイバー犯罪など、国籍を問わず広がる犯罪構造も日本の治安を悪化させている。
外国人犯罪のニュースが増えたように感じるのはなぜか?
実際の検挙増加に加え、衝撃的な事件がテレビやインターネットで繰り返し伝えられることが、外国人犯罪を目にする機会と体感治安の悪化を強めている。
警察庁が2025年10月に全国の15歳以上5,000人を対象に実施した「治安に関するアンケート調査」では、現在の日本の治安を「よい」と考える人が60.3%だった。一方、過去10年間で治安が悪くなったと考える人は79.7%に達している。
治安が悪くなったと考える理由として、76.4%がテレビや新聞で犯罪報道を見る機会の増加を挙げ、61.1%がインターネットニュースで犯罪報道を見る機会の増加を挙げた。自分や家族、知人が被害に遭った、または遭いそうになったことを理由にした人は14.2%だった。
これは、犯罪への不安が単なる思い込みだという意味ではない。実際の事件増加と報道量の増加が重なり、直接被害を経験していない人にも強い不安を与えているということだ。
外国人が関与する事件は、国籍という分かりやすい要素が見出しになりやすい。SNSでは同種の事件が連続して表示されるため、一つの事件を見た後に関連ニュースが次々と推薦され、「毎日のように起きている」という印象が形成されることもある。
一方、動画配信サイトなどでは、外国人の受入れを「グローバリストによる陰謀」と一括して説明する情報も流れている。犯罪統計や制度上の問題を検証せず、不安をあおる印象操作には騙されないようにしたい。
今後、治安がさらに悪くなる危険はあるのか?
受入れ人数の拡大に対して雇用監督、生活支援、在留管理、犯罪組織対策が遅れれば、外国人犯罪と地域トラブルが増加する危険は十分にある。
外国人だから犯罪に走るのではない。しかし、来日前に多額の借金を負い、低賃金の職場から逃げても次の仕事が見つからず、日本語による相談もできない状況に置かれれば、違法就労や犯罪組織に接近する危険は高まる。
問題を個人の国民性だけで説明すれば、受入れ企業、監理支援機関、送り出し機関、違法ブローカーの責任が見えなくなる。外国人を安価で交換可能な労働力として扱う制度は、外国人本人だけでなく、地域住民の安全にも負担を転嫁する。
組織犯罪への入口をどう塞ぐか
警察庁によると、2025年の来日外国人による刑法犯検挙件数のうち、共犯事件の割合は45.3%だった。日本人の共犯事件の割合11.5%と比べ、組織的に実行される傾向が強い。
住宅を対象とする侵入窃盗では、来日外国人事件の70.8%が共犯事件だった。海外の指示役が日本国内の実行役に指示し、盗品を海外へ運び、犯罪収益を国外へ送る事例も警察庁によって確認されている。
2025年には、ベトナムにいる指示役の下で役割を分担し、関東地方などのドラッグストアから化粧品を盗んで海外へ搬送していたグループが検挙された。実行役には留学生、特定技能外国人、技能実習生が含まれていた。
この種の犯罪は、入国審査だけでは防げない。国内の盗品買取、口座売買、不正送金、偽造在留カード、違法な人材仲介まで含めた犯罪インフラを遮断する必要がある。
受入れ拡大と治安を両立させるには何が必要か?
外国人の受入れを続けるなら、人数の確保を先行させず、違反者を排除する仕組みと、犯罪に追い込まない雇用・生活環境を同時に整備しなければならない。
政府は「外国人との秩序ある共生」を掲げているが、理念だけでは治安を守れない。受入れによって利益を得る企業や仲介機関にも、教育、生活支援、所在確認、法令順守の責任を負わせる必要がある。
具体的には、次の対策が求められる。
- 入国前の身元確認と送り出し機関の審査強化
- 高額な仲介手数料や来日前借金の規制
- 受入れ企業に対する抜き打ち監査と違反時の受入れ停止
- 日本語教育と法律・生活ルール教育の義務化
- 失踪者や不法滞在者を早期に把握する情報連携
- 外国人犯罪組織、盗品流通、地下銀行への捜査強化
- 自治体や警察の人員・通訳予算を受入れ人数に連動させる仕組み
重要なのは、外国人全体を危険視することでも、犯罪増加への懸念を差別として封じることでもない。違反した個人や企業には厳格に対応し、法令を守って生活する外国人には日本社会の一員として明確なルールと支援を提供することである。
外国人労働者を必要とする産業の利益だけを優先し、治安、教育、住宅、医療にかかる費用を地域社会へ押し付けてはならない。受入れ政策の費用と責任を明確にすることが、持続可能な共生の最低条件になる。
まとめ
在日外国人400万人時代の治安を守る鍵は、外国人の人数そのものではなく、受入れの速度に管理能力と社会基盤を追いつかせられるかどうかにある。
2025年の来日外国人犯罪は3年連続で増加し、刑法犯検挙件数は前年比31.4%増となった。特に窃盗や共犯事件、海外の指示役と結び付いた組織犯罪の増加は、政府が正面から対応すべき治安上の問題である。
一方、現在の検挙件数は2005年のピークを下回り、警察統計の「来日外国人」と在留外国人全体の定義も異なる。外国人が増えれば必ず治安が悪化すると断定するのも、犯罪への懸念を根拠のない偏見として退けるのも適切ではない。
高市政権が育成就労制度を通じて外国人材の受入れを進めるなら、治安維持に必要な費用と行政体制も同時に拡充する責任がある。人数だけを増やして管理を後追いにすれば、日本の治安がさらに悪化する危険は現実のものとなるだろう。
主な参考資料
本稿の人数、犯罪統計、制度内容は、以下の公的資料に基づいている。
- 出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」(2026年公表、2025年末現在)
- 出入国在留管理庁「育成就労制度の概要」
- 出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」
- 警察庁「令和7年における組織犯罪の情勢」(2026年公表、2025年確定値)
- 警察庁「令和7年の犯罪情勢」(2026年公表、2025年確定値)
- 内閣官房「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」(2026年1月23日決定)
