世論調査の数字は何を意味するのか
最近の世論調査では、「石破続投を望む」という回答が半数前後を占めるようになっている。確かに「石破下ろし」の勢いは夏前と比べて明らかに鈍り、政権交代を急ぐ必要性を訴える声も弱まりつつある。だが、この数字は「積極的支持」ではなく「他に選択肢がない」という消極的支持の側面が強い。裏金議員の問題で与党全体が信頼を失墜させた中で、石破首相が「クリーンな政治家」として浮上しているに過ぎないという見方もできる。
経済界との蜜月は追い風か、それとも重荷か
石破首相と豊田章男・トヨタ会長が高校・大学の同級生であることは、経済界との強力な連携を象徴するエピソードとして取り上げられる。しかし、これが必ずしもプラスに働くとは限らない。株価が過去最高を更新し続ける一方で、実質賃金や中小企業の収益は改善しておらず、「大企業優遇政権」との批判が強まる可能性がある。豊田氏との関係が強調されればされるほど、「財界の代弁者」というレッテルが貼られるリスクも否定できない。
「左寄り」のイメージと国民の期待
石破首相は自民党内で「ハト派」「左寄り」と評されることが多い。安全保障では現実的な路線を取る一方、社会政策では分配や福祉を重視する姿勢を示してきた。そのため「保守政権でありながら野党寄りの政策を打ち出せる」という期待を抱く層も一定数存在する。だが逆に言えば、保守層からの支持を失い、党内基盤を揺るがす火種になり得る。特に防衛費や日米関係をめぐる議論では、石破首相の慎重姿勢が「同盟の足かせ」と見られる懸念もある。
裏金問題と「清廉潔白」のイメージ
今回の選挙で与党が敗北した最大の要因は裏金議員問題だった。その中で、石破首相が「クリーンなイメージ」で比較的傷を負わなかったのは事実である。だが、国民の政治不信が「石破一人の潔白さ」で払拭されるわけではない。むしろ、党内の膿を出し切ることができなければ、「一人だけ清廉で他は腐敗」という構図が逆に孤立を招きかねない。清廉さは武器であると同時に、党内政治の妥協を拒む要素にもなり得る。
続投は「安定」か「停滞」か
石破首相の続投は、短期的には「株高」「清廉なイメージ」「経済界との協力」という追い風を受けて安定をもたらすだろう。しかし長期的には「消極的支持」「大企業偏重の批判」「保守層からの離反」「党内孤立」というリスクが表面化する可能性が高い。国民が期待するのは「左巻きの理想像」ではなく、政治不信を本当に払拭し、暮らしに直結する政策を実行できるかどうかにかかっている。
国内では参政党をはじめとする右派ポピュリズムの勢力が拡大している。これは欧米でも見られる世界的な潮流であり、既存のリベラル寄りの路線に抗する動きでもある。もし日本だけがこの潮流に背を向け続ければ、国民世論との乖離が広がり、結果として国力や国際的な発言力の低下につながりかねない。石破政権が「清廉さ」と「安定」を維持しながらも、こうしたグローバルな政治ダイナミズムにどう向き合うかが、今後の大きな試金石となるだろう。