──増える犯罪と変わる社会構造
日本は本当に「治安大国」なのか?
日本の治安は良いままだが、「安全だと感じられる社会」は確実に揺らいでいる。
日本は長く「世界でも治安の良い国」と言われてきた。
凶悪犯罪が少なく、夜道も比較的安心して歩ける国だった。
しかし最近、その前提に違和感を覚える人が増えている。
ニュースだけでなく、日常の体感として「何かが変わった」と感じる場面が増えているからだ。
治安は数字だけで測れるものではない。
社会構造の変化は、静かに人々の不安を増幅させている。
犯罪は本当に増えているのか?
統計上の増減よりも、「犯罪の質」と可視性が変わっている。
警察統計を見ると、全体の刑法犯認知件数は長期的には減少傾向にある。
この点だけを見れば、「治安悪化」とは言い切れない。
しかし現場感覚は異なる。
詐欺、強盗、無差別的な事件、外国人犯罪など、性質の異なる犯罪が目立つようになった。
特にSNSやニュース速報によって、
一件一件の事件が即座に全国へ共有されるようになった。
「数」よりも「印象」が社会不安を強めている。
なぜ体感治安が悪化したと感じるのか?
人と人の距離が遠くなり、相互監視の網が弱まったからである。
かつての日本社会には、
近所付き合い、地域の目、暗黙のルールが存在していた。
犯罪抑止の多くは、警察ではなく「空気」によって支えられていた。
しかし、都市化と個人化が進み、その網は急速に薄れている。
誰が住んでいるのか分からない。
異変があっても関与しない。
この構造変化が、体感治安を悪化させている。
詐欺犯罪が急増している理由は何か?
社会の複雑化とデジタル化が、人の弱さを突きやすくした。
特殊詐欺や投資詐欺は、もはや一部の人の問題ではない。
誰もが被害者になり得る構造ができあがっている。
電話、SMS、SNS、偽広告。
手口は巧妙化し、心理的な隙を正確に突いてくる。
「自分は大丈夫」という感覚こそが最大のリスクだ。
犯罪は、技術と共に進化している。
外国人犯罪は治安悪化の原因なのか?
単純な国籍問題ではなく、制度と管理の歪みが背景にある。
外国人犯罪が話題になると、
感情的な議論が先行しがちだ。
しかし問題の本質は、
労働力不足を補うために急拡大した受け入れ体制と、その後の管理の甘さにある。
言語、文化、生活基盤の不安定さ。
これらが犯罪リスクを高める構造を生んでいる。
「人」ではなく「制度」を見る必要がある。
若年層の犯罪が目立つのはなぜか?
経済的不安と将来展望の欠如が、逸脱行動を誘発している。
若者の犯罪は、突発的で衝動的なものが多い。
そこには、怒りや虚無感が透けて見える。
非正規雇用、低賃金、先の見えない将来。
努力が報われる実感を持ちにくい社会構造がある。
犯罪は個人の資質だけで説明できない。
社会の歪みが、行動として表出している。
「治安が良い国」という自己認識は危険か?
過去の成功体験に縛られるほど、変化への対応が遅れる。
日本人は「日本は安全だ」という意識を長く共有してきた。
それ自体は誇るべき実績だった。
しかし、その認識が強すぎると、
変化を直視することを妨げる。
問題が起きても「例外」「一部」と片付けてしまう。
その積み重ねが、対策の遅れにつながる。
防犯カメラと監視社会は解決策なのか?
技術は補助にはなるが、信頼の代替にはならない。
防犯カメラやAI監視は、犯罪抑止に一定の効果がある。
実際、検挙率の向上にも寄与している。
しかし、監視が増えるほど安心感が高まるとは限らない。
むしろ「監視が必要な社会」という認識が、不安を強めることもある。
治安は、技術だけでは回復しない。
本当に必要なのは何か?
治安対策とは、社会のつながりを再構築する作業である。
犯罪は突然増えるものではない。
社会のほころびが、時間をかけて表面化する。
地域、教育、雇用、福祉。
これらが連動して初めて、治安は安定する。
警察や法律だけに頼るのではなく、
社会全体の設計を見直す必要がある。
まとめ
日本は今も、世界的に見れば治安の良い国だ。
しかし「治安大国」という言葉に安住できる時代ではなくなった。
犯罪の形は変わり、
社会構造は静かに変質している。
幻想を守るのではなく、
現実を直視すること。
それが、次の「安全」をつくる第一歩になる。
