地方のスーパー消滅は「商業の衰退」ではなく「生活基盤の崩壊」である
地方でスーパーが閉店するというニュースは、珍しいものではなくなった。しかしこれは単なる店舗整理ではない。物流2024問題、物価高、人手不足が同時進行することで、地方の生活インフラそのものが機能不全に陥りつつある。スーパーの消失は、その最も分かりやすい表面現象にすぎない。
なぜ今、地方のスーパーが危機に陥っているのか
背景には三つの要因が重なっている。
- 物流コストの急上昇
- 慢性的な人手不足
- 地方特有の購買力低下
これらは個別に見れば以前から存在していた問題だ。しかし2024年以降、それらが同時に限界点を超えたことで、地方の小売は耐えられなくなっている。
物流2024問題は何を変えたのか
いわゆる「物流2024問題」とは、ドライバーの時間外労働規制強化によって、運べる量・距離・頻度が制限される構造変化を指す。
都市部では配送効率の改善や価格転嫁で対応できるが、地方では事情が異なる。
・配送距離が長い
・積載効率が悪い
・往復で荷が揃わない
この結果、地方向け配送は真っ先にコスト増の対象となり、採算が合わなくなる。
物価高は地方ほど生活を直撃する
同じ物価上昇でも、地方の方が影響は深刻だ。理由は単純で、可処分所得が低い上に、選択肢が少ないからである。
都市部では複数のスーパーや業態が競争し、価格調整が起きる。一方、地方では「唯一の店」であることも珍しくない。その店が値上げすれば、住民は受け入れるしかない。
なぜスーパーは「最後まで残る業態」だったのか
これまで地方でも、スーパーは比較的最後まで残ってきた。
理由は、食品が生活必需品であり、一定の需要が見込めたからだ。
しかし現在は違う。
・配送頻度が減る
・仕入原価が上がる
・人件費が跳ね上がる
この三重苦により、売上が安定していても赤字になる構造が生まれている。
人手不足は「雇えない」のではなく「続かない」問題
地方のスーパーでは、採用自体はできても定着しないケースが多い。
理由は以下の通りだ。
・業務負担が重い
・時給を上げきれない
・通勤手段が限られる
結果として、少人数運営が常態化し、営業時間短縮や棚の縮小につながる。これは売上減少を招き、さらに人件費を圧迫する悪循環を生む。
“買い物弱者”は誰なのか
買い物弱者とは、高齢者だけを指す言葉ではない。
・車を持たない単身世帯
・免許を返納した高齢者
・共働きで平日日中に動けない世帯
スーパーが撤退すると、これらの人々は一気に生活の自由度を失う。
ネットスーパーや移動販売は代替策として語られるが、量・価格・頻度の面で恒常的解決にはならない。
一次分析:地方スーパーの採算構造を分解する
地方スーパーの収支を単純化すると、以下のようになる。
・売上:地域人口×来店頻度×客単価
・費用:仕入原価+物流費+人件費+光熱費
人口減少により売上は自然に下がる一方、費用はすべて上昇している。
特に物流費は、努力では吸収できない固定的上昇となっている点が致命的だ。
行政支援ではなぜ救えないのか
補助金や支援策は存在する。しかし多くは一時的で、構造を変えない。
店舗が求めているのは「延命」ではなく、持続可能な運営モデルだ。
自治体単独では物流網を維持できず、国レベルでも抜本策は見えていない。
このまま進むと何が起きるのか
スーパーが消えると、次に起きるのは以下の連鎖だ。
・外食・中食への依存
・食費の上昇
・栄養バランスの悪化
・地域外流出の加速
つまり、スーパーの撤退は人口流出を加速させるトリガーとなる。
地方の買い物問題は「物流政策そのもの」の問題である
地方のスーパー問題は、経営努力や住民意識の問題ではない。
物流・労働・価格転嫁を都市基準で設計してきた結果として生じた構造問題である。
買い物弱者を生まないためには、
・地方向け物流の再設計
・生活インフラとしての小売再定義
・採算だけに委ねない政策判断
が不可欠だ。
地方のスーパーが消える日は、もう未来の話ではない
それはすでに始まっている現実であり、
明日の都市部の姿でもある。
