1. 政治的背景と少数与党の苦境

石破政権は2024年10月の誕生以降、衆議院・参議院ともに政権基盤が弱体化し、「少数与党」体制が続いてきました。2025年7月の参議院選では、自民・公明連立政権がついに過半数を失い、政策立案・法案成立の難易度が急激に上昇しました。

多くの国民は、物価上昇や暮らしへの不安を背景に、政治に対する信頼を失いつつあります。石破首相は「国民の期待に応えられなかった」と述懐しました。

2. 石破退陣のタイミングと狙い

9月7日の退陣表明では、米関税交渉の進展をひとつの区切りとし、自らの退陣を政治的なメッセージとして活用しました。これは「交渉が未完のままリーダーが辞めた」ではなく、「一定の成果を示したうえで責任を取る」動きと位置づけられます。

しかし裏を返せば、党内での圧力や不信任の胎動を早期に回避するための内輪調整による政権延命の一策とも言えます。

3. 市場反応と経済へのインパクト

退陣発表後、為替市場では1ドル=0.7%の円安進行が見られ、長期国債への売り圧力から30年債利回りが歴史的高値を記録しました。

市場では「政局混乱」と「不透明な政策運営」への懸念が一気に高まり、金融市場に直接的な動揺をもたらしました。

4. 次期総裁選と政策課題

自民党は10月初旬に臨時総裁選を予定しています。石破氏は立候補を辞退し、後進への道を開く立場をとりました。

浮上する候補者としては:

  • 小泉進次郎農林水産相:改革色を持ち、若手支持層に強い。
  • 高市早苗前経済安保相:財政・金融政策にタカ派寄り。
  • 林芳正官房長官:安倍・岸田両元首相との連携強く、中間的立場。
  • その他、小林鷹之元相や茂木敏充氏なども注目されています。朝日新聞Reuters JapanポリティコReuters

次期党首は、国会での議席確保戦略野党との連携強化経済・社会課題への即効的対応という重圧にさらされています。少数政党状態からどう立て直すかが最大の焦点です。

政治の転換期に立つ日本

石破氏の退陣は、少数与党による政治停滞の象徴であると同時に、改革・刷新の契機となる可能性も秘めています。次の総裁・首相には、党内の結束を急ぎ回復しつつ、野党や市民との対話を通じた政治運営を構築する力が求められます。

政治的な「停滞」という危機を乗り越えるために、政権を刷新できるか改革の具体的なビジョンを示せるか。それが日本政治の内外に向けた最重要のアピールとなるでしょう。