日本企業のDXは「技術」ではなく「組織の論理」で止まっている
日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進まない理由は明確だ。ITが足りないのでも、人材がいないのでもない。DXが既存組織の意思決定・評価・責任構造と根本的に衝突しているからである。多くの企業はDXを導入しているが、変革は起きていない。
DXとは本来、何を変える取り組みなのか
DXは業務効率化ではない。
本来のDXとは、デジタルを前提にビジネスモデル・組織・意思決定を再設計することだ。しかし日本企業では、DXが「IT化」「システム刷新」「紙の削減」と同義で扱われがちである。
その結果、
・ツールは導入された
・システムは更新された
・しかし仕事のやり方は変わらない
という状態が量産される。
なぜ日本企業はDXを「部分最適」で終わらせるのか
理由は、日本企業の意思決定構造にある。
日本企業では、責任が分散され、合意形成が重視される。そのためDXのように一部を壊し、摩擦を生む改革は避けられやすい。
・全部門合意が前提
・失敗すると責任が重い
・成功しても評価されにくい
この構造では、DXは「無難な改善」に矮小化される。
現場はなぜDXに抵抗するのか
現場がDXに消極的だと批判されることが多い。しかし実態は違う。
多くの場合、DXによって負担が増えるのは現場だからである。
・入力作業が増える
・二重管理が発生する
・成果が見えない
現場にとってDXは「楽になる改革」ではなく、「仕事の性質が変わる改革」だ。説明と再設計なしに進めれば、抵抗が生じるのは当然である。
一次分析:日本企業DX失敗の5類型
日本企業のDX失敗は、次の5パターンに分類できる。
- ツール導入型
→ ITは入れたが業務が変わらない - 部門限定型
→ 全社に波及しない - ベンダー依存型
→ 内製化できず改善が止まる - 掛け声型
→ スローガンだけで実態がない - 評価不整合型
→ DX行動が人事評価に反映されない
特に⑤は致命的で、DXを進める人ほど損をする構造が残っている。
なぜDX人材が定着しないのか
「DX人材が足りない」とよく言われる。しかし本質は、活かせる環境がないことにある。
・決裁権がない
・裁量が小さい
・失敗が許されない
この環境では、DX人材は疲弊し、外部に流出する。人材不足は結果であり、原因ではない。
成功している企業は何が違うのか
DXが進んでいる企業には、共通点がある。
・目的が明確(コスト削減ではなく価値創出)
・トップが責任を持つ
・評価制度が連動している
特に重要なのは、DXを「経営課題」として扱っている点だ。IT部門任せにせず、経営判断として位置付けている。
DX成功の条件①:業務を「壊す」覚悟があるか
DXは改善ではない。破壊を伴う。
紙文化、承認フロー、属人業務──これらを維持したままDXは成立しない。
成功企業は、
「この業務はもうやめる」
「この役割は不要になる」
という判断を恐れない。
DX成功の条件②:評価と報酬を変えられるか
DXを進める人が正当に評価されなければ、改革は続かない。
成功企業では、次の点が共通している。
・挑戦を評価する
・短期成果だけを見ない
・失敗を学習として扱う
DXとは、評価制度改革そのものでもある。
DX成功の条件③:現場を「使う側」から「設計側」に変える
DXを現場に押し付ける企業は失敗する。
現場を設計プロセスに巻き込み、「使わされるDX」から「自分たちで作るDX」に転換した企業は定着率が高い。
日本企業のDXは「技術導入」では完成しない
DXが進まない理由は、
・文化
・組織
・評価
・責任
これらが変わらないまま、ITだけを導入してきたからだ。
DXとはデジタル化ではなく、企業の思考様式を変える行為である。
日本企業のDXが本当に進むのは、
「変えないことのリスク」を
「変えることの痛み」より重く見たときだ。
