日本は「再び世界一」ではなく「不可欠な製造拠点」を目指している

結論から言えば、日本が1990年代のような“世界最大の半導体製造国”に完全復活する可能性は高くない。しかし、日本がグローバル半導体産業において欠かせない製造・供給拠点として再浮上する可能性は十分にある

現在進行している半導体争奪戦は、単なる産業競争ではない。国家安全保障、地政学、経済安全保障が複雑に絡み合う「国家プロジェクト」そのものであり、日本はこの構造変化の中で独自の立ち位置を築こうとしている。

なぜ今、世界は「半導体争奪戦」に突入しているのか

半導体は、もはや電子部品ではなく国家インフラである。

背景①:供給網の脆弱性が露呈した

  • 新型コロナによる工場停止
  • 米中対立による輸出規制
  • 台湾有事リスク

これらが重なり、半導体の供給が一時的に滞ったことで、自動車・家電・通信機器など幅広い産業が停止した。
この経験から、各国は「安く作れる国」ではなく、「自国内または同盟国で確保できる体制」を重視し始めた。

背景②:半導体は軍事・AI・宇宙の基盤

最先端半導体は、

  • AI・データセンター
  • ミサイル誘導
  • 衛星通信

と直結しており、国家安全保障と不可分になっている。

日本はなぜ半導体大国から転落したのか

技術ではなく「経営判断」と「構造」が原因

1980〜90年代、日本企業は世界シェアの過半を握っていた。しかし、

  • 垂直統合モデルへの固執
  • 国際分業への適応遅れ
  • ソフトウェア・設計軽視

により、ファウンドリ(受託製造)という新しいビジネスモデルへの転換に失敗した。

一方、台湾・韓国は「設計と製造の分業」「政府主導の集中投資」を徹底し、競争力を高めていった。

現在の日本半導体政策は何が違うのか

今回は「失敗を前提にした設計」になっている

現在の日本の動きは、過去と明確に異なる。

① 巨額の公的支援

  • 製造拠点誘致への直接補助
  • 装置・材料産業への研究支援

これは「市場任せでは勝てない」という現実を前提にした政策である。

② 単独覇権を狙わない戦略

日本は最先端ロジック半導体で単独トップを狙っていない。
代わりに、

  • 製造装置
  • 材料
  • 後工程

といった不可欠だが代替しにくい領域に集中している。

日本は「製造」においてどこまで優位性を持つのか

装置・材料・精度の3点で依然として世界最高水準

日本の半導体産業は「見えにくいが極めて強い」。

独自分析:日本が握るボトルネック

  • フォトレジスト
  • シリコンウエハ
  • 成膜・洗浄装置

これらは代替が難しく、供給が止まれば世界の半導体生産が止まる。
つまり日本は「量で勝つ国」ではなく、「止められない国」なのである。

海外企業誘致は本当に成功するのか

短期的成功、長期的課題

海外企業の工場誘致は、

  • 雇用創出
  • 技術移転

という効果がある一方、

  • 補助金依存
  • 人材の国内循環不足

というリスクも抱える。

特に問題なのは、設計人材・研究人材が日本国内で育ちにくい構造が続いている点である。

日本の最大の弱点はどこにあるのか

人材と意思決定スピード

日本の最大の課題は技術ではない。

  • 半導体設計人材の不足
  • グローバル人材の流動性の低さ
  • 意思決定の遅さ

半導体産業は「失敗を前提に高速で試行錯誤する」産業であり、日本の組織文化との相性は必ずしも良くない。

日本は半導体で再び世界に必要とされるか

覇権ではなく「信頼性」で存在感を示す

日本が目指すべき姿は、

「世界一を取る国」ではなく「止められない国」

である。

  • 地政学的に安定
  • 技術的に精密
  • 同盟国から信頼される

この条件を満たす製造拠点は多くない。
半導体争奪戦の最終局面で、日本は静かに重要性を増す立場にある。

半導体争奪戦の勝者は「最後まで残る国」

半導体争奪戦は短距離走ではない。
補助金競争でも、シェア競争でもない。

最後に問われるのは、

  • 供給を止めない力
  • 技術を磨き続ける持久力
  • 信頼され続ける国家運営

その意味で、日本にはまだ勝負の余地がある。